よく、発達障がいのある子どもは「褒めて育てなさい」っていわれます。でも、じっさいに生活していると、なんでもかんでも褒めてばかりじゃどうにもならない場面って、あるのではないでしょうか? ときには、しっかり叱ってあげるということを、全くせずにすむということはないものです。

 

でも、上手に叱るのって、褒めること以上に難しいです。特に、子どもに発達障がいがあるなら、なおさらです。

 

「罰」を受けることって、子どもからしたら、いやな体験です。そして、しつけで「罰」を使うときには、そんな嫌な思いはもうしたくないから、これからは行いを改めよう、と子どもに気づいてほしいのです。

 

だけど、子どもの側からすると、そうやって気持ちを切りかえて、前向きに行動を改めるということは、そんな簡単にできることではありません。

 

上手に叱るためにはいくつかの注意点があります。

 

ひとつめは、叱る大人は、子どもと十分な信頼関係ができているということ

 

信頼関係のない大人から叱られると、子どもはそれを「敵」の襲来と感じてしまうかもしれません。そうすると「ストレスシステム」が過剰反応してしまって、適切な学習を邪魔してしまうのです。

 

ふたつめは、怒りにまかせて叱るのではなく、叱る強さを調節すること

 

大人が冷静さを失ってしまっては、子どものために叱っているのか、大人の怒りを発散させているだけなのかが分からなくなってしまいます。叱ることは諸刃の剣といえます。

 

叱ったときに子どもに与えるストレスが強すぎると、適切な学習ではなく「誤学習」が誘導されてしまうことがあります。たとえば、苦痛をのがれるために、すぐにバレるような嘘をついたり、暴力的なめちゃくちゃな行動で周り混乱させようとしたりして、「その場しのぎ」の解決を目指してしまいます。そして、そういう解決方法が、だんだん癖として身についてしまうことがあるのです。

 

じつは、この「その場しのぎ」の行動って、「ストレスシステム」が生み出す、本能的には正しい反応なんです。なぜなら、敵に襲われて命の危険にさらされてときには、先のことより、とにかく今を生き残ることが大切だからです。ですから、子どもを叱るときには、そんな反応を引き起こしてしまうほどの、強すぎるストレスを子どもに与えてはいないだろうか、と注意していることが大切なのです。

 

そして三つめは、叱ったあと、ちゃんと許して仲直りをするということ、です。

 

子どもを叱ったとき、一番大切なことは、「なぜ叱られたのか」ということを、子どもが理解しているということです。そのためには、ただ叱るだけではなく、許して仲直りするということが大切です。

 

じつは、子どもが叱られた理由を理解するのは、叱られているそのときではなくて、許してもらったときなのではないでしょうか? 叱られているそのときは、ただただ悲しくて涙がでてきてしまいます。でも許してもらったときには、もういちど、大切な大人との「絆」をとりもどします。この瞬間にこそ「こんどからはちゃんとやろう」「これはからは気をつけよう」という気持ちが生まれてくるのです。  

こんなふうにして、「ストレスシステム」の状態と「社会交流システム」の状態を行ったり来たりすることって、じつは社会性の発達に必要な、基本的なことでもあるのです。

 

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