「遊び」を使った発達支援の実例

  • 「遊び」から発展したトイレトレーニング!

ルカ子ども発達支援ルームでの「遊び」を使った発達支援の実例をご紹介します。

(ただし、プライバシーの問題がありますので、ご紹介するのは、実際に行った支援をもとに創作した、仮想のストーリーです)

 

二歳のA君という男の子は、ことばの発達に遅れがありました。また、初めて出会う人や、初めて取り組む活動、初めて訪れる場所はいやがって、強く抵抗をしてしまいました。それでお母さんは、彼をどこにも連れていくことができずに困っていました。また、食事やトイレなどの生活習慣のしつけもなかなか進みませんでした。

 

お母さんはそんなA君を、一念発起して「そらのとり」の活動につれてきてくれました。まずは個別で体験してもらうため、スタッフは親子を遊戯室に案内しました。でも、A君は怖がってしまい、遊戯室には入りたがりません。

 

そこでスタッフは、自分は室外にでて、まずはお母さんとA君だけに遊戯室に入ってもらって、二人だけで部屋に入ってもらい、まずはA君に、そこにどんなおもちゃがあるのかを、探索してもらうことにしました。

 

(これは、「初めての場所」で「初めての人」と出会うという、二つの「苦手」が重なった体験を、まずはお母さんと二人だけで「初めての場所」に慣れてもらってから、そのあとで、「初めての人」であるスタッフが登場する、と段階を分けることで、苦手を「細分化」するための支援です)

 

 そしてしばらくしてから、静かにゆっくりと、スタッフも部屋に入ってきて、しばらくA君の様子を観察していました。

 

スタッフは、彼の視線や表情をみながら、「何を見ているのかな?」「どんなことに興味を持っているのかな?」と想像力をめぐらしていました。

 

するとなんとなく、A君は「色」に興味をもっているのではないか、と思えてきました。でもA君はまだクレヨンをつかって上手に絵を描いたりすることはできません。そこで…

クレヨンをモチーフにしたオリジナルのキャラクターを考え出しました。名付けて「くれよんちゃん」。

 

Aくんは、このキャラクターをたいそう気に入ってくれて、スタッフとA君はすっかり仲良くなることができました。調子に乗ったスタッフは、「クレヨンちゃんの歌」まで作曲して、一緒に歌ったりして遊びました。

 

ところで…

 

Aくんはなかなかトイレの練習が進んでいませんでした。その理由のひとつとして、「トイレに入るのがこわい」というのがありました。そこで、遊戯室の隣にあるトイレに続く廊下に、

 

クレヨンちゃんの張り紙をしてみました。そしてA君が一番気に入っていたピンク色のクレヨンの先にはトイレが…

 

A君は張り紙をたどりながら、先に進みたい気持ちと、トイレが怖い気持ちが葛藤して、ドキドキはらはら、それを見守るお母さんもスタッフもドキドキはらはら、そしてとうとうトイレに到達したときには、みんなの表情に「やったー」という笑顔がこぼれました。A君も得意げな様子で、それからはトイレに入ることを、少しも怖がることはなくなったのです!

 

この支援の中には、「細分化」の要素も「構造化」の要素も含まれています。そして、遊びながら楽しく進めることで、こころの余裕を失うことなく取り組むことができるのです。